VOL .09 [本当のオシャレさんとは] 2010.04.18掲載

dressup都会にはオシャレな人たちが溢れています。特に東京は、流行を取り入れるのがものすごく早くて敏感だ。

東京・渋谷のスクランブル交差点のスターバックスの上から、双眼鏡で歩く人を2時間も定点観察してみたら、きっと今の流行が分かると思う。いつか時間がある時にやってみたいものです(笑)。渋谷という街はオシャレさんがオシャレさん同志を惹きつけ刺激し合い、お互いのファッションセンスを磨き合っているのでしょう。

私もこの業界に入って二十余年、洋服を探したり購入する動機としましては、ファッション雑誌よりもむしろ実際に見たオシャレさんの着こなしやアイテムを参考にすることが多いかと思います。間近に目に入って来るリアルに着こなすオシャレさんの着こなしインパクトには、紙媒体を越えた説得力があります。

仕事場で出会う数多くのオシャレさんたちの着ている洋服に「この服は、どこのブランド?」「いつ買ったの?」と質問攻めのように聞いてる自分が時々います。そのように図々しく聞いても相手はあまり悪い気持はしませんし、私も耳学問的に参考になり頭の中で次の購入リスト候補にストックされるのです。

また、ファッション雑誌でも「街角スナップ」のコーナーは要チェックですね。ここでは雑誌コーデより簡素ではありますが、生きた洋服コーデが学べます。このような感じで私は洋服を選んでいます。

ファッション業界に居ますと『本当のオシャレさん』に遭遇することが稀にあります。私が思う本当のオシャレさんとは、その人の存在自体が周りの人たちの空気を変えてしまう独特の個性とファッションセンス。ちょっといやらしい言い方をすると、「出し抜き感」が素晴らしいのです。見る人にハッと思わす一種の感嘆のような「驚き」と「発見」があり、全体のコーディネイトの統一感は崩さずに、どこか「遊び心」を持った絶妙な「外し方」のセンスが光るのです。

オシャレの楽しみ方は十人十色。これは料理の調理法にも似ているし、足し算引き算の計算された中に生まれてくる一種の頭脳戦に近いところもあります。味のスパイスとしての抜き感・崩し感を加わえ、最後は素材を生かすといったところでしょうか。

更に例えれば、服を身に付けて初めて分かる、理科の実験での化学変化のような面白さもあると思います。

要はオシャレって、それを見る人の好みによって様々に捉えられ評価されるものです。客観的にコレが一番というものはないのです。大いにオシャレを楽しみたいものです。

そうそう、先程言っていた「外し方」の良い一例をお話ししますと、もう15年以上も前のことだったと思います。世界的に有名なミュージシャンの坂本龍一氏が、TVの音楽番組に出演された時の事です。氏は、シンプルなネクタイなしのグレースーツにニューバランスのスニーカーを履いて、ピアノの演奏をしたのを見た時の衝撃は今でも忘れられません。今ではスーツにスニーカーといった組み合わせは、それほど斬新ではないのかもしれませんが、当時スニーカーをここまでカッコよく昇華させた人は私は知りません。

オシャレの本質には、自分のためだけにと考えずに、周りの人に楽しんでもらおうという視点に立ったならば、また全く違う「景色(価値観)」が広がってくるのかもしれません。それは、自分も周りも幸せにする“人生のエッセンス”のひとつなのかもしれませんね。


添付写真: 東京・神保町の古本屋で見つけたスティーブ・マックウィーンの写真集(本当のオシャレさん代表選手)と私のメガネ(老眼鏡)

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Written by Yasumoto Takashi