VOL .29 [憧憬の街並みParis] 2010.09.04掲載

暑かった8月からやっと解放され、9月になれば少しは涼しくなるだろうと、自宅ベランダからクロード・モネの絵画に出てきそうなオレンジ色の夕景を眺めながら願い佇む、今日この頃です。

今回は、「憧れの街並みParis」に纏(まつ)わる思い出を辿りながら、フランス・パリについてお話したいと思います。

はじめてパリを訪れたのは、前回(VOL.27)にもお話したパリ・コレクションが最初でした。当時は、往復の格安チケットのみを日本で買って、滞在ホテルは現地パリに着いてから探そうと、まずは単身ひとりで乗り込みました。若さゆえの勢いなんでしょうか、他の日本人モデルと現地で合流すればなんとかなるだろうと考えて行ったのを思い出します。

案の定、現地に入ったら現在では立派な俳優となって活躍している加藤雅也氏と合い、格安ホテル(1泊1万円ぐらい)の滞在費でもなるべく浮かそうと折半し、食事もジャンクフードばかりを食べ、デカイ男二人がセーヌ川を眺めながらフランスパンをかじったのを思い出します。

その時の格安ホテルは、加藤氏が先に滞在していた所であり、サンジェルマン・デュプレにあるカフェ・ド・フロールのすぐ裏手にあたるプチホテルでした。ですのでパリのカフェデビューは、とりあえず近くのカフェに入ろうということで、たまたまフロールとなったのです。

25歳でモデルを始めてから、街に溶け込むオープンカフェが大好きで、自宅に4枚ある版画は、すべてパリのカフェや街並みを描いたものばかりです(上の版画はその内の二枚)。また、カフェ・ド・フロールといえば、パリのカフェのメッカとも例えられ、もしもミシュランガイドにカフェ部門があるとすれば、確実に三ツ星カフェとして君臨する存在でしょう。

なので、千円程度(コーヒー一杯ぐらい)で味わえる三ツ星クラスの雰囲気と表通りを闊歩するパリジャン・パリジェンヌたちをフロールという特等席から眺められる醍醐味は、一度は味わってみてもいいかもしれませんね。その時は、気高いギャルソンの仕草もお見逃しなく(笑)。

近年、日本の若い女性は、雑誌やマスコミの影響もありパリに憧れ、何ヶ月、何年も滞在する人が多いようです。もしかしたら、パリ市民より街のショップやレストラン、観光スポットに詳しいのではないでしょうか。しかし、憧れてパリに住んでみたものの、夢と現実のギャップにパリ症候群に悩む人も多いようです。やはり、そこに住むには住んでいる者同士のサポートや地域コミュニティー(日本人仲間)が確立されてないと大変のようなのです。

何年か前のテレビ番組で、パリ在住の女優・岸恵子さんが「パリの人は、フランスの中でも、パリ市民とそれ以外のフランス人と分けて見た方がいい」というようなことを言われていたのを思い出します。パリ在住ならではの言葉ですね。私もこれまで何度かパリに行ってますが、確かにパリの人は、日本人程親切ではなく、客と自分とを対等に扱い、気高いギャルソンなどは、私が相手をしてやってあげるぐらいの態度をとってきます。パリ市民の気質は「私たちが世界で一番素敵なんだ」というパリが持つ美しい街並みに住むプライドとそこで営む自負を持っている人々のようにも映ります。

実際、私はパリに住みたいとはあまり思えないのです。住むとなれば、今だに主言語はフランス語でありストレスが溜まり、物価も高く、インフラ整備(停電・断水がたまにある)もままならず、あまり住みやすい処とは思えません。観光ぐらいがちょうどいいのかもしれません。

パリの魅力とは、素晴らしい数々の西洋建築の文化遺産に囲まれた街並みと、そこに息づくパリ市民の気高さと誇りとが、相思相愛の中に溶け合って共存し、ある種、日本・京都の山紫水明の中に建ち並ぶ神社仏閣と京人にも似た趣を映し出しています。都市と人間が織りなす調和に、その国その時代の精神をも垣間見ることができる、貴重な場所だと感じます。そして、過去のヨーロッパの栄華を誇った象徴とも言える「芸術の都パリ」がそこにあります。

パリは、私の中では憧れの街のままでいいのです。 I love Paris , but I love Tokyo more . . . . .


添付写真: 上/デビッド・シュノイヤーの版画 下/ミッシェル・ドラクロアの版画 共にパリの街並を描いている作品

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Written by Yasumoto Takashi

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