VOL .30 [コミュニケーションの壺] 2010.09.11掲載

初秋は朝夕共に過ごしやすく、読書に耽(ふけ)るには、なんとも気持ちがいい季節となりました。

最近、新聞を読んでいると、下段の書籍出版広告欄に「話し方本」と言われる、コミュニケーション能力を磨く本が数多く出版され、中には爆発的に売れている本もあるのが目を引きます。私も試しに何冊か本屋で手に取ってみましたが、色々と役立つ情報が著者の体験談などを織り交ぜて、おもしろ楽しく語っています。

その中の一つに、以前毎週土曜の朝日新聞朝刊にショートコラムを連載して、楽しく読ませてもらっていた藤巻幸夫氏の『特別講義 コミュニケーション学』という本があります。氏の本の内容は、数ある話し方本のほとんどがスキル磨きといった技術的手法に終始する中、氏ならではのコミュニケーションの本質を探り、氏の熱い人柄と数多くの経験に蓄積されたノウハウやチャート、挿し絵が豊富に入れられて読みやすい一書でありました(上写真の本)。

そもそも何故今、コミュニケーション能力(スキル)が必要とされているのかを考えてみますと、若い人たちの多くは、人と人との繋がりがゲームやインターネット、ケイタイなどの影響で希薄化され、相手の気持ちを深く推し量れず、人間関係に悩む人たちが増えているように思います。

また、中高年の方にとっては、社会での責任が増え、人を動かす立場になってみると、なかなか思うように周りが動いてくれず、スムーズに事が運ばずに思い悩む人も多いようにお見受けします。

現代は、人々の多様な価値観がドラム洗濯機の中で、シャツと靴下とタオルが絡みつくように入り乱れ、収集がつかないことも多いと思います。そのような中で、「心を重ねて、力を合わせることにより、生まれるパワー(求心力)というものが必要である」と藤巻氏は語っています。

私は撮影の前日に、所属モデル事務所のマネージャーさんから、明日の仕事やオーディションの詳細を聞きます。もしも、モデルの共演者がいたり、オーディションでのクライアントの商品がわかっている場合は、事前にモデルさんのプロフィールなりブログをチェックしたり、クライアントの事前調査などをして話題のネタ探しをしていきます。それは、私なりのコミュニケーション・マナーでもあり、ホスピタリティー精神からくる仕事の下準備だと考えています。

今までの社会は、上からの指示のみで動き、個人の「有能さ」を競い合い、どれだけ実績を上げ、周りを蹴落としてでも生き残れるかというサバイバルゲームのようでした。しかし、これからの流れは、経済番組や業績を伸ばしているトップの経済人たちの話を聞いてみてもわかるように、社内でのチームワーク力がキーワードとなって実績をあげる「サッカー型組織」や「オーケストラ型組織」といった方向にと動いており、「有能」から「有用」な人物が求められているようです。会社は、その人の存在価値を有能さだけを求めているのではなく、いかに有用か(周りとうまくやっていけるコミュニケーション能力と愛社心ある業務)を期待しているのではないでしょうか。

モデルの仕事もやっていることは、これといった特殊なものではなく、どれだけ作り手(クライアント)のイメージや設定に近づけるかという作業であります。その根底には、どの業種とも共通する「サービス精神」からくるものなのです。その現場に「真心」と「ユーモア・笑い」を込められるかが、私にとっての『コミュニケーションの壺』であり、今の世の中のビジネスに必要なものなのかもしれません。

ちなみに、私は口下手で不器用な分、仕事先では真心や感謝を表わすために、私なりのやり方で色々と工夫をするようにしています。その手法は業務秘密です(笑)。


添付写真: 残暑がまだまだ続く中、クーラーではなく自然のそよ風とともに、自宅ソファーでついつい昼寝なんぞしてしまいました。

関連コラムの検索に便利 「プライベートコラム 目次」

【次号予告】 テーマ:今年の秋冬は、レザー帽子にチャレンジしてみては?(VOL.31)

 今号でなんとかVOL.30を迎えることができました。これからも『男磨きのすすめ』をさらに深化させ、量と共に質も上げられるように努力して参りますので、今後とも皆様にご愛読いただけるよう邁進の覚悟でおります。どうぞよろしくお願いします。

Written by Yasumoto Takashi

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>