VOL .38 [ユニクロファッションとは何か] 2010.11.05掲載

久しぶりに大きなテーマを持ってきました。このテーマを書くにあたって、以前にユニクロの仕事でお世話になっておりますし、現在は競合会社の仕事もやらさせてもらっておりますので、ここではお世辞などは抜きにして中立的立場に立って、尚かつ言葉を慎重に選ばなければなりません。

実は、今回のテーマを書こうと思いついたのは、ユニクロのメガショップが自宅と都内撮影スタジオの動線上に誕生したのがきっかけだったのです。

情報収集を兼ねてお店を覗いてみたのですが、まずはフロアーの広さに驚きました。端から端までゆうに100メートルはありそうです。次に驚いたのが、広告(店内ポスター)の大きさとクオリティーの高さでした。「今という風」に乗っているキャラクターたちが次から次へと起用されています。冒頭でも話ましたが、何度かユニクロの仕事に携わった時、いつも一流スタッフ陣の顔ぶれには驚かされます。ユニクロの躍進の裏には、緻密な広告戦略を垣間見ることができます。

流行ファッションとは、言い換えれば「時代の風」のようなものです。ファッションという時代の風は、何処からともなく吹き渡って止み、また吹き始めるという永遠の繰り返しです。それを創り出している源は、やはり世界の一流メゾンのデザイナーであったり、はたまた新素材開発者であったり、それを支えるマスメディアや評論家のバックアップなのでしょう。それは先人の残した作品をイメージソースにしたり、無のものから有へと発明したりと、現代のクリエイターたちは知恵を絞っているのです。ユニクロも新素材の低価格ということで、これまで色々な流行を生み出してきました。

現在、ユニクロは世界戦略を打ち出し、アジアを中心に快進撃を続けています。これは、ファッションブランドがまだ行き渡っていない地域に出店しているから売れているのかと思いきや、それだけではないようです。その鍵は、ユニクロのロゴに付いているコピー「MADE FOR ALL」(あらゆる人のための服)が象徴しています。

この言葉には、とても奥深さをはじめて見た時に感じました。ファッションというのは、音楽や芸術と同じで、あらゆる人間(人種)に理解できる可能性を持つツールであることを再確認させられたのです。

今までファッションとは、自分という個性の表現方法であるとほとんどの人は思い込んでいました。しかし、その表現方法を打ち破ろうとしています。人々のライフスタイルが多様化している現代に、あえてフラット(無個性/スタンダード)なデザインを提案することにより、「アンチテーゼという風」を巻き起こしているのです。

ユニクロという風は、一見無個性で邪魔にはならない生活の一部の様なものなのです。「ユニクロ=低価格=日本のメーカー」というイメージを今の世の中(景気低迷)では、あまり否定する人はいないでしょう。この世界不況時代にマッチした、安心して誰にでも手に取れるファストファッションを提供しています。

また、ユニクロの経営戦略には、「浅く・広く・長く」(良いものをできるだけ無理のない値段で、多くの人に、長く使ってもらうこと)といった基本原理が入っており、お客様目線を忘れていません。それは常に最大公倍数的に先々までの販売戦略を踏まえ、「カッコイイ服より売れる服が魅力的である」と考えているように思えます。

言い換えれば、ユニクロは誰にでも似合う服を目指している。いや、違う。どの服にでも組み合わせができるものを目指しているのだと思う。今まではファッションコーディネイトがちょっと苦手というお客様が、従来の作り手(メーカー)が提案するほど未熟ではなく、自分らしく上手に洋服の組み合わせを使い分けているようです。これは、世界グローバル化時代の考え方にマッチしているのではないでしょうか。

要するに、ユニクロファッションとは、邪魔にならない組み合わせファッションであり、主張しすぎない日本型ファッションとも言えるのですね。(どこかの外交政治と同じだ。。。)


添付写真: ゴージャスなムートンロングコート(私物)に、ユニクロのカットソー(ヒートテック)という組み合わせもありじゃないですか。

VOL .94 [ファストファッション...] 2010.11.05掲載

関連コラムの検索に便利 
「プライベートコラム 目次」

【次号予告】 テーマ:モデル安本が、センスを磨くコツをこっそりお教えします。(VOL.39)

Written by Yasumoto Takashi

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>