VOL .47 [日本のスポーツ論] 2011.01.12掲載

今回は、自分の中で長い間、封印していた「汗と悔しさの青春時代」をちょっとだけ紐解こうと思います。

小学校では、サッカー王国静岡に育ち、誰もがサッカーボールを蹴っていた少年時代。私の人生の中で、唯一リーダー的存在を示したのは、小学校サッカーチームのキャプテンを務めた時でした。この時が最初で最後でしたね(笑)。

中学校では、父親の勧めと兄のスター選手的活躍に刺激され、あっさりとサッカーから軟式野球へと進んだのでした。中学三年生の時には、市内の野球選抜チームの選手にも選ばれ、野球でもちょっとだけ頭角を現した時期がありました。

高校へは先に兄が通っていた名門高校へ。入学までには父の計り知れない息子を慕う尽力と、兄の七光りのお陰で、無事に兄の後輩になることが出来たのです。

高校時代の三年間は精神的に本当に辛かった。自分はさほど野球が好きではなかったにも拘らず、野球を続けなければならないという両親に対する責任。そして、野球部監督との確執にも近い暗黙の嫌悪感が三年間ずっとのしかかって、自分を苦しめ続けていたのだった。

この気持ちを何とか後進に続く若い少年たちには味わってもらいたくないという志を持って、自分の理想とする学校教師を目指して上京したのであります。

今思えば、この悔しい期間があったからこそ、弱肉強食のモデル業界でも適応できているのかと思います。

まあ、酸っぱくて苦い経験談は、これぐらいにしておきまして、今回テーマに取り上げるのは、「日本のスポーツ」についてお話をしたいと思います。

私は、スタジアムや競技場に出掛けたりしてまでスポーツ観戦をするという、熱狂的な対象(選手・チーム)があったり、行動派ではありませんが、機会があればいつかは会場に出掛けて見てみたい選手は沢山おります。例えば、ゴルフの石川選手・野球の斉藤選手(日本ハム入団)・スケートの浅田選手・相撲の白鳳力士などなど、数多くの注目している選手はおります。

スポーツは、プロ・アマ問わず“筋書きのないドラマ”が展開され、その一瞬で明暗を分ける厳しい現実を見せられるだけに、後で編集が効かない真剣勝負の世界です。これは、ある意味、勝敗や記録がすべてを支配する完結明瞭な世界とも言えるでしょう。

今の日本プロスポーツ界は、スター選手になるほど、プライベートはあったものではありません。スター選手たちはその中でも、自分に打ち勝たなければならないプレッシャーは、スポーツをしていない者でも想像がつきます。戦い続けるモチベーションを持続させなければならない厳しい世界です。その原動力は、やはりその競技が大好きである事が一番なのでしょう。

今や日本において、競技スポーツに従事するということは、「真面目だ」「行儀がいい」「体が鍛えられる」といった共通の価値観に置かれているようです。確かに、自分の少ない経験から思うのですが、競技スポーツの一番良い所は、成績や技術が伸びなくても精神は鍛えられます。丹念に自分を磨く精神過程において本質があります。要するに、結果がすべてではないということでしょうか。

つい先日、早稲田大学の斉藤投手が久しぶりに高校時代(早稲田実業)のチームメイトと酒を酌み交わす映像をテレビで見た時、現在も野球を続けている同級生は、斉藤選手ただ一人というコメントに唖然としました。甲子園をあれだけ賑わした同僚たちだけに、現役を続行して未来のすばらしい指導者として育成されればと勝手に思ったわけです。もしかしたら、斉藤選手以外は、本当は野球が好きではなかったのかもしれませんね。

日本のスポーツ界の現状は、先進国であるがゆえにエンターテーメントのごとく消費されすぎているように見えます。本来のスポーツの意義である“自分との葛藤で得た宝物”をなおざりにされることなく、よい方向へと向かってもらいたいと、一時でもスポーツ指導者を志した私は、切に願うところであります。


添付写真:高校三年生の春、京都への修学旅行の予定が、兵庫にある甲子園球場(第51回選抜大会)にすり替わってしまった。私は選手の前から五番目を歩く。

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Written by Yasumoto Takashi

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