VOL .48 [芸術鑑賞のツボ] 2011.01.18掲載

今年(2011)に入ってから、頻繁に訪れている美術館。もしや、何かを暗示しているのでしょうか。それは、あたかも“理性ばかりを磨くのではなく、もっと感性の方も伸ばしなさい”と言われている様な気がします(笑)。。。

今回のテーマは、個人的な課題も含めて「芸術鑑賞のツボ」(広義での意味)を、私ならではの視点でお伝えできればいいなと、思いついたわけです。

一般的に、芸術と言ってもジャンルは多岐に亘り、絵画・彫刻・建築・文芸・音楽・舞台・デザインなどなど表現方法は様々です。鑑賞する側は、好みや趣味も全く違い十人十色、百人百様で分かれるところがあります。それだけに何がいい作品かという判断基準を指し示すのは、難しいところかと思います。

私は、絵画などを鑑賞する時に、いつも着目する点としましては、作品の奥に秘められた時代背景(世情)や、作者が作品に込めたメッセージとは一体何なのかを見つけ出すことです。当然、その道の評論家の批評やキュレーターガイドなどを参考にもしつつでのことです。はじめて作品に向かう素人目には、ある程度の予備知識がないと、作者の言わんとするメッセージの解読には、不可能に近い難しさが時々見受けられます。

美術館や博物館といった箱物展示では、現代作家よりも過去の著名なアーティストの作品に興味があります。その中でも名作中の名作と言われているものは、海外に数多くありますが、日本人の芸術的興味の深さからか、海を渡り東京で見られることが多く、これまた結構なことです。

過去の名作というものを見てみると、大半は宗教画的要素が色濃くあり、地上に生きとし者への「人間讃歌」であったり、もしくは、神仏の偉大さを讃える構成のどちらかに大きく分類されるかと思います。ある著名な美術評論家の言葉を引用するならば「美は聖と共にある時、高さを実現できる」と語っていました。まさに、ここが鑑賞のツボのように私は思います。

現代では、アーティストにとって「聖」というテーマは、なかなか創りづらいものとなってきております。言い換えれば、現代は人間讃歌や自然礼賛の傾向が強く、「高さ」=「神仏崇拝」が表現しにくい環境なのかもしれません。

東京・渋谷の地下鉄銀座線と井の頭線を結ぶ通路には、巨大な岡本太郎画伯の壁画が飾ってあります。“芸術は爆発だ”という彼の名言は、誰もが知るところですが、あの壁画に初めて触れたときは、画伯の芸術に込める息吹きを感じることができました。見る者を揺さぶる聖なるエネルギーというものを、一人でも多くの人が、作品に感じることができれば、これもまた後世に残るものとなるのでしょう。

素晴らしい芸術とは、のちのちの後世にまで語り継がれるものであり、多くの人の心を揺さぶり、またある時は癒しとなって、作品の良し悪しが判定されてゆくものと思います。ここで言葉を整理するならば、どれだけ「永遠性」や「普遍性」を表現されているかが、認定基準のように思います。

今回は、かなり堅いテーマではありましたが、安本ブログ(ホームページ内)では対照的に内容を軽く・柔らかく、安本卓史の内面にメリハリをつけてゆきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします(笑)。


添付写真:以前に訪れた、フランス・ニースにあるシャガール美術館にて。

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Written by Yasumoto Takashi

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