今回のテーマは、「定番=STANDARD NUMBER」です。どの分野においても定番商品というものがあり、そこには様々な魅力が眠っているもの。そんな定番の魅力とは一体何かを、今回は探ってみたいと思います。
その前にひとつ間違え易い服飾用語として「ロングセラー」「コンサバティブ」「オーソドックス」「ベーシック」「マスターピース」など類似語があり、定番とそれらの言葉の違いを簡単に整理しておきたいと思います。
ロングセラーとは、売上にかなり比重を置いているのが見受けられ、語源は日本で生まれた造語(long+seller)であります。
コンサバティブとは、昔ながらのトラッド(伝統)を重んじ自分を堅持しようとする保守的な様を言います。
オーソドックスとは、無難なスタイル全般を総称的ニュアンスで使われることが多いです。
ベーシックとは、まさしく基本の意であり、あまり凝ったデザインを加えてないスタイルのこと。
マスターピースとは、過去の名品や代表作を敬称的に表現することが多く、ひとつの見本的存在のこと。
以上が簡単な説明であります。定番との違いは、それらが売れようが売れまいが安定した需要が継続され、親しまれるべき存在であるのが「定番」と、自身は解釈しております。
さて、先日、大定番商品となっているバーバリーのトレンチコート(ショート丈)を撮影で着る機会がありました。久しぶりに着たのですが、何か新鮮な思いに駆られ、今までの古臭いイメージを払拭する着こなし方が自分の中に沸々とイメージとして湧いてきたのです。この感覚は一体何だろうと思っていたのですが、数日後、服飾史家である中野香織女史の雑誌記事を読んだ時、ひとつのヒントが見つかったのです。
その記事の一節には「ベーシックな服は、人を没個性にするどころか、着る人自身の、いわば生きる姿勢そのものを色濃く表してしまう、真の意味での個性を表現する服にほかならないのである」と。
ベーシックを定番に置き換えてみても、内容はそう変わりはないでしょう。定番には、流行をもろともしない安定感が内包され、身につける者との相性やセンスで如何様にも変化できる柔軟性を持ち合わせています。
そして、人の内面の個性を炙り出す役割をも秘めているのでしょう。ゆえに、定番の魅力とは、身につける者、使う者が安心して扱えるところに真骨頂がありそうです。
また、定番商品であっても多少なりともイノベーションを繰り返し、色やディテールを変化させて時代に風化させない創意工夫も必要であることを忘れてはなりません。現に先述のバーバリーのコートは、フロントボタンの大きさが以前よりも大きくなり、丈の長さも短いものが追加されている所なんぞ、支持され続けるためのひと工夫があります。時代の気分を上手にキャッチしていかないと生き残ってはゆけないのでしょう。
最後に、定番には人を魅了させるヒストリーやエピソードが付随されることもしばしば。それもひとつの支持され続ける必須条件なのかもしれません。定番を侮るなかれ…ですね!
添付写真:ヤング層にも着こなし次第で似合う定番商品のバーバリーコート。
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