VOL.97 [ノームコアと頓知] 2014.04.08掲載

今年に入ってニューヨークから、ひとつのファッションテーマ「ノームコア:Normcore」という言葉が投げかけられた。出所は「ニューヨーク・マガジン」の記事からということです。切り口が非常に面白いので、今回のコラムテーマで取り上げることにしました。

この「ノームコア:Normcore」という言葉、ノーマル(Normal)とハードコア(Hardcore)を繋げてひとつの造語にしたらしいのです。ストレートに訳せば「筋金入りの普通」とか「究極の普通」のような感じになるのですが、僕は『普通が素敵!』といった解釈にとりました。スタイルアイコンは、スティーブ・ジョブスというのですが、ビル・ゲイツも同じくカテゴライズされてもいいのかもしれません。着こなしを簡単に言えば、気をてらわない普通の恰好やシンプルな装いがクールということ。

そして、ノームコアを日本に初めて紹介してくれたのが、ファッションエッセイストの中野香織さんではないかと思います。また、更に詳しく書かれているブロガーさんもいらっしゃいましたので、こちらもご参考になればと思います。

さて、この造語、本当の発信源はトレンド予測集団(K-HOLE)の提唱したものが、雑誌のエディターさんによって解釈され、派生していったようなのです。また、ノームコアは服装スタイルというより、ライフスタイルや生きる姿勢に重きを置いているようなのですが、ニューヨーク周辺在住のファッショニスタや今をときめくオシャレタレント達のトレンド空気を読み取った節も感じられます。

もしくは、2014年春夏のファッションテーマである「スポーティでありながらもステータスを備える」といったようなトレンドに呼応して発案されたとも考えられます。いずれにせよ、ノームコアは現在でも世界に拡散し続けているようなのです。

一体この言葉を各ブランドディレクターやエディターたちはどう捉えているのでしょうか。普通は普通なんだけど、ただの普通では面白くない。では、どんな普通がクールなのか。それは「普通=シンプル・イズ・ベスト」なのか、「普通=快適リラックス」なのか、「普通=上質スポーティ」なのか、普通というキーワードから色々な切り口が生まれてきそうです。

また、ノームコアとは、一見、みんなと同じが心地良いといった解釈に捉えがちなのですが、ここは決して没個性に流れるものではなく、ファッションというものをもう一度再考しようと位置づける現象とも考えられます。時計の振り子の針が揺り戻す時、一瞬、針が止まるかのようにも見えます。これからのトレンドを決める分水嶺の役割なのかもしれません。

人の個性や性格が唯一無二であるように、ファッションスタイルも百花繚乱の如く咲き誇るといった自由な世界にあります。個人がそのスタンスに求めるものは、トレンドを追いかけるも良し、古いものをずっと愛し続けるも良し、時にはトレンドを取り入れながらベーシックを守るも良し、それは自由裁量であり、着る人のライフスタイルや気分次第で楽しむのが本来のオシャレの醍醐味なのです。

要するに、一休さんの頓知(とんち)ではありませんが、「普通であって、普通じゃないカッコよさとは何ぞや!」といった、ウィット感覚を必要とされるファッションセンスがノームコアを紐解く鍵なのかもしれません。方向性を間違えれば、ただの「ダッサーーー!」(ダサいの意)になりかねませんから、その辺のさじ加減(ハズシとクズシのテクニック)に注意しなければいけないようですね。


添付写真:スティーブ・ジョブスとビル・ゲイツの対談写真を拝借。

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Written by Yasumoto Takashi

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