VOL.105 [高倉健さんに学ぶ男の美学とは] 2014.12.16掲載

man-of-aestheticsスクリーンの中で「男たるものは」といった一人の主人公の生き様を通して、国内外から多くのファンを魅了してきた高倉健さん。突然の悲報から早一カ月が経とうとしている。(2014.11.10が命日で、マスコミが一斉に報道したのは一週間後の18日だった。)

健さんの人柄は、様々な撮影現場のエピソードを読む限り「義理堅い」「謙虚」「ひたむきさ」といった日本人が忘れかけている昔気質な言葉が浮かんでくる。そこにはストイズムに通ずるものがあり、今の我々に大切なメッセージを投げかけているようだ。今回は、高倉健さんへの追悼コラムと位置づけ、生前のご活躍を偲びつつ「男の美学とは何か」を僕なりに探ってみようと思います。

健さんの生き方に習うのなら、男の美学とは決してイヤラシさ、つまりエロさは含まれてはいない。また義理や人情、けじめといったものが根底に流れており、とことん男の中の男を貫き通しているのではないか。

それを象徴する一つに、最愛の妻であった江利チエミさんとやむおえず協議離婚され(江利さんの身内の不祥事から、健さんへの配慮で)、その後、江利さんの早過ぎる他界以後も独身を貫いたことは、健さんの生き様がここに結実したと言える。所詮、女性にモテたい思いで自分磨きをしても、薄っぺらい人格しか築けないのかもしれない。まさに巷のちょいワルオヤジとは対極にある人ではなかったのか。

健さんのストイズムは仕事面でも顕著に表れている。撮影の為とはいえ2日間絶食して役作りをしたり(作品:幸福の黄色いハンカチ)、CGがない時代に雪山ロケで4時間も足跡が消えるのを待ったり(作品:八甲田山)、撮影現場では一度も座ることがなかったなど、そのような逸話は数多くあり、監督や共演者、スタッフ関係者に感銘を与えている。

スクリーン上の健さんと普段の素の健さんは違うのかといえば、そうでもないらしい。後輩役者さんを可愛がり先輩風なんか吹かせず、真っ直ぐに生き抜いた。スクリーン上とプライベートが一致する稀有な存在であった。

男の美学とは、難しいものではなく単純なものの中にあると考える。健さんは自他共に認める不器用な人間であるというが、それは役作りの多様性の狭さに色濃く言い表されているように思われる。しかし、傍から見ればそれが最大の魅力となり、健さんにしかできない独特の存在感なのだ。

全身全霊で役柄に打ち込む姿は、まさに人間・高倉健そのものが滲み出る生き様だった。そこには役柄を越えて貫き通す強い信念という美学がある。

最後に、健さんについて思いを馳せていたら、こんなことが頭に浮かんできた。

人間関係を器用に振る舞い、
何でも卒なく熟すことを良しとする男は、
誰からも “羨ましがられる存在” かもしれないが、
決して “憧れられる存在” ではない。

もし文中に失礼な表現があれば、お許し願いたい。

関連コラム VOL.05 [男の品格って何]

関連コラム VOL.06 [男の色気は何処から来るのか]

関連コラムの検索に便利 「プライベートコラム 目次」


添付写真:どなたが撮影したのか分かりませんが、有名なカメラマンさんの作品だと思います。高倉健さん、50代ぐらいでしょうか。

【次回予告】 テーマ:生涯、本物のウイスキーを求め続けた男・マッサンに贈る(VOL.106)

Written by Yasumoto Takashi

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>