VOL.101 [カモの次はクレイジー] 2014.09.23掲載

crazy今回のコラムテーマは、トレンドのパターン柄のお話になります。以前VOL .43 [ミリタリーとは何ぞや]2010.12.09掲載でカモフラージュ柄(迷彩柄)を少し取り上げてみましたが、今やファッション市場にはカモフラージュ柄のデザインがこれでもかと溢れ出し、あらゆるアイテムに使われています。この勢いはまだまだ止まりそうもありません。

そして、ここにきて勢いづくパターン柄がもう一つあるのです。それは数年前からジワジワと浸透してきていた「クレイジーパターン柄」といったものです。

初めて「クレイジー」という言葉を聞いた方は、ちょっと聞こえが悪いかもしれませんが、ここでの大まかな意味としては「ちぐはぐな」「ちょっと変わった」「アシンメトリー(左右非対称)」といったニュアンスで使われています。ファッション用語で初めてクレイジーなる言葉を僕が耳にしたのは、たぶんフランクミューラー時計の「クレイジー・アワーズ」という文字盤の数字がアトランダムに並べられているシリーズのこと。クレイジーなる響きには、何か面白いといったニュアンスが含まれていて、子供心の無邪気な感性すら感じます。

また、クレイジー柄の原点を辿ると、やはり「ツギハギ」「パッチワーク」からの流れが発端となり、裁断で残った生地を無駄なく継ぎ合わされ、ひとつの製品にするといった昔の職人さんの知恵から派生した工夫技が今に昇華されているように思えます。

今年(2014年)の秋冬のトレンドは、ずばり「デニムシャツ」と「ツイード」の大旋風が吹き荒れると予想されます。今までになかったクレイジーパターンのデニムシャツやツイード生地アイテムが数多く出回りそうです。また、着こなしが難しいと言われているツイードジャケットもクレイジーパターン柄にすることでハードルが下がり、若者に人気が出ることとなりそうです。

そこでクレイジーパターン柄を上手く着こなすヒントは、「一粒でも二度美味しい」的発想で多面的に見せている生地ですので、それに合わせるアイテムは至ってシンプルな無地柄が適しています。クレージーパターン柄のシャツやジャケット、コートでしたら、パンツは無地が無難なのでしょう。逆にクレージーパターン柄のパンツでしたら、無地系のシャツを合わせてくるといった濃淡のメリハリが必要です。

ご多分に漏れず、僕も今季のトレンドアイテムをいくつか購入してみました。添付写真はツイード生地のパッチワークパターンで作られたダウンベストはそのひとつ。ダウンベストを毎年探していたのですが、なかなかしっくりくるものが見つからず仕舞いでいました。それが、行きつけの古着屋さんを覗いてみたら、なんとお宝を発見。きっとハリスツイードの古着生地をリメイクして、トレンドアイテムとして誕生させたのだと思います。

ファッショントレンドというのは、年が変われば一気に流行るものもあれば、じわじわとやってくるものと2パターンあります。その点、クレイジーパターン柄は後者のジワジワ型ではないかと思います。そう言えば、今年初めの頃、ニューヨークを発端に「ノームコア」というシンプルな装いが一大ムーブメントとして起こりました。その勢いはもう少し続くと思われますが、クレイジーパターン柄は言うなれば、ノームコアの真逆な方向かもしれません。時計の振り子の針が一度止まり、次に違う方向に動き出すように、クレイジーパターンは今後のファッショントレンドを先導するやもしれません。

混沌とする世界情勢とファッションが連動するとは思いたくありませんが、クレイジーな国々が世界各地に誕生している今、ファッション界もどこに向かおうか迷っている様にも見えます。

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添付写真:全国に展開する古着ショップのジャンブルストアが、今秋から発売したハリスツイード・ダウンベスト。クレイジーパターンではありませんが、ツギハギ仲間であるのでご勘弁を(笑)。

【次回予告】 テーマ:メガネをランキング方式で語ってみます。(VOL.102)

Written by Yasumoto Takashi

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