VOL.109 [プライドと見栄] 2015.05.04掲載

pride and vanity人間、歳を積み重ねると邪魔になるものが増えてきます。さて、何でしょうか?よーく考えてみてください、思いつくもの沢山ありませんか。そうそう、クローゼットに収まり切れない洋服。下駄箱から溢れ出す靴やスニーカー。お腹周りに溜まった脂肪 、、、(笑)いやいや、それは人間にとって良くも悪くも作用する「プライド」と「見栄」なるものなんです。

人生においてプライドというものは、時に上手く心に作用し、「敗けるものか」「このままでは終われない」と奮起させる起爆剤にもなったり、「こんな自分でどうするんだ」と甘やかさないよう戒める防波堤にもなります。プライドを別の言葉に言い換えるのならば「自負」「矜持」といった向上心を土台にして、自分の内面に向けられる精神作用(プラスエネルギー)だと考えます。

一方、プライドに似ているものに「見栄」というものがあります。見栄とは一体どんな時に現れるのでしょうか?遡れば、誰もが幼稚園や保育園で初めて集団生活を経験し、自分と他人は違うんだという意識が芽生えます。もっと早ければ兄弟間で始まるケースもあります。そこで自分の主張をはじめて表現し、個性が現れ出します。人には性別、年齢、職業、学歴、家柄などなど、自分に付随する装飾や肩書をつけられるものが一杯ありますが、まだまだ小さいうちはこのような飾りを自覚できませんから、見栄を張るといった場面が少ないのかもしれません。

そして、人は歳を積み重ねると共に見栄を張りたくなる時が往々に現れます。仕事上のライバルや同僚に負けたくない悔しさから、後輩から憧れの眼差しで見られたい思いから、彼女や妻、子供からは威厳ある存在でありたい気持ちからもあります。思わず見栄を張りたくなるケースは様々です。

現在、私は50歳を少し過ぎたのですが、時々考えることがあるんです。プライドってなんだろう、見栄ってなんだろうって。プライドと見栄の関係は、向かうベクトルは双方ともそんな悪いものではないと思うのです。が、しかし、自分の中から全くプライドや見栄をなくしていいものなのか。もし出会うすべての人を師と思えるようになれば、自分の中から見栄を張ることがなくなるのか、強い自己主張や自己顕示欲を抑えることができるのか、と色々と考えてしまいます。

現代はSNSツールで個人の情報交換が盛んに行なわれ、人が発信する情報に対して敏感に反応していると自分が振り回されてしまう生き難い世の中であります。誰々さんが何をした、何を買った、といちいち気にしていたらキリがありませんよね。

最近知ったお気に入りの言葉に「マイクロヒット戦略」というものがあります。どうやら「コツコツ」とか「地道に」といったニュアンスのことで、よくビジネス経営学で使われる用語なのです。野球で言えば、イチロー選手のようにパワーヒッターではなく、単打を積み重ねて、いつのまにか大記録を達成してしまうということでしょうか。

しかし、単打戦法は時として長打になることもあります。己の欲を抑え、時流を待ち、自分が出来ることをコツコツとやっていれば、きっといつかホームランも打つような思いがけないことだってあります。私はそんなスタイルが好きなんですね。(自己解釈がかなり含まれています。参考文献:「売れる企画はマイクロヒット戦略で考えなさい!」廣瀬 知砂子)

今、街の本屋さんに並べられている書籍群には「習慣」という言葉が溢れています。習慣ブームと言ってもいいかもしれません。良い習慣には、本来の自分を取り戻すプログラミングがなされ、やる気や前向きなモチベーション維持には欠かせないものとなっています。これからは「マイクロヒット習慣を身につけよう!」っていうのもいいじゃないですかね。

「プライドと見栄」この二つを上手く折り合いをつけることは、今の世の中では難しいのかもしれませんが、共に消し去ることができない大切な感情です。歳をとるほどに見栄は極力抑えた生活に憧れを抱く今日この頃なのですが、いつかホームランを打つようなことがあっても、ゆっくりとベースを周り、また次のヒットを打つことだけを考える選手になりたいものです。

関連コラム VOL.82 [SNSと風]

関連コラムの検索に便利 「プライベートコラム 目次」

添付写真:友人の山崎裕也氏が撮ってくれたポートレート。

【次回予告】 テーマ:完璧に必要なものは、一体何だろう?(VOL.110)

Written by Yasumoto Takashi

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>