VOL.110 [“完璧”に必要なものとは] 2015.07.13掲載

perfection久しぶりのコラム執筆ですが、別にコラムネタを選んでいたのではありません。ただなんとなくコラム更新に意欲が湧かず、ほったらかしにしていただけなのです。人はいつもやる気満々でエネルギーに満ち溢れているのであれば、それはそれで越したことはないのですが、やはり波というものが生じてきます。まあ、気長にのんびり続けてゆくことをモットーにしていきたいものです。

今回のコラムテーマは「完璧」といった、お洒落術やファッションをこよなく愛する諸氏には永遠につき纏う課題と言いましょうか、目指す目標であります。しかし、お洒落術やファッションというのは、数値で言い表せられるものではなく、主観視での判断に委ねられるところが多い趣味嗜好の世界なので、自分は「完璧だ!」と思えばその通りなのです。ですが、そこにビジネス(商品化)が絡んでくると客観的な判断も必要となり、需要と供給のバランスやセンスの見せどころが必要となってきます。

ここで本題に入る前に、ひとつ押さえておきたいことがあります。先程から“ファッション”という言葉を使っておりますが、僕自身、とても広義に捉えておりまして、「ライフスタイル全般=ファッション」なのです。日常生活の瞬間に目を向けますと、毎日が取捨選択の連続であり、その結果がその人の人格を作り、生活を形取り、センスを磨くものであります。それらは一朝一夕にできるものではなく、毎日を積み重ねることでやっと出来上がってくると考えています。この考え方は以前、バカラグラスのコラムで触れた生活美学に通じているものなのです。しかるに、ファッションは日常をワクワク・ドキドキさせてくれるエンジンとも言えます。

さて、「完璧」というテーマに話を戻しますと、完璧に必要なものとは一体なんでしょうか。色々な要素が頭に浮かんできますよね。「隙がない」「寸分違わない」「誰もが認める」「直しようがない」などというキーワードでしょうか。しかし、ファッションは数学や化学、物理学とは違い人の感性を土台としていますから、そうそう数値化されるものではありません。ある意味、見た目勝負の世界でもあります。

今、日本にもアメリカや韓国に遅れて整形ブームが女性たちに訪れています。もし、あなたの恋人、もしくは奥様が整形によって絶世の美女とまでいかなくても、以前の原型を留めない姿になったらどうしましょう?両手を挙げて喜びますか?それとも幻滅するのでしょうか?整形といっても、えっどこか変えた?ぐらいの自然さや、はたまた嫌味になるぐらいの不自然さもあり、あなた誰?的な別人28号のような変貌ぶりもあります。やはり、整形度合いにもその人のセンスや美意識が現れ、好き嫌いは当然別れるものです。

僕らはある意味「完璧」という目標を目指して日々あらゆるものに磨きをかけているのでありますが、整形は「見た目主義」に立った手っ取り早い方法であります。しかし、顏や体型の形状を変えたからといって、果たして完璧に近づくのでしょうか。本質的に言えば、内面が顔やスタイルに顕在化するものでありますから、自分にウソをついている状態が整形と言えます。自分を誤魔化して新しい自分として生きようとする試みは、一つの選択肢であると理解はできますが、外見に伴う内面を更に作り上げていかなくてはなりません。

また、整形をしなくてもその人自身が魅力を放つ方法は他にもあります。例えば、服装を変える、髪形を変える、ダイエットしてスリム体型にする、食事を変える、住む街を変える、持ち物(時計・クルマ・住居etc)を変える、恋人を変える?と、色々な方法で自分に磨きを掛けられますよね。人は新たな刺激や経験でどんな風にでも変えられる生き物なのです。

ゆえに、以前「クズシとハズシの美学」というコラムもありましたが、「完璧」を求めるヒントには、ちょっと足りない、ちょっと抜けているもの(隙)が必要であり、“意外性”はその人の魅力を倍増させるものとなります。例えば、画家が風景や人物を描く時に、どこまでキャンパスに描くのがいいのか、これ以上細かく描いたら芸術性が落ちるという落し処が肝心であるように、完璧に近ずくにはちょっと足りないサジ加減が必要となります。はたまた、いつも完璧に仕事を熟す上司や先輩が、奥さんの前では頭が上がらず、可愛い子犬のような一面を見せた時、「あっ、〇〇上司も意外と可愛いところがあるんだな~」と親しみやすさを覚える瞬間があります。

結局、人は完璧に見えて、ちょっと抜けているバランスが心地良いことが、世の中には沢山あることを知らなければなりません。あまりに完璧ばかりを求め過ぎても、行きつく先は息苦しい世界が待っています。こと服装術に関しては、これでもか~といった“やり過ぎ感”には注意したいものです。そお言っている僕自身、若い頃は完璧を求め過ぎる傾向が強かった者です。歳を重ねるごとに、次第にそのような柔軟さというか、気負いないものを好む考え方になってきたのであります(笑)。

関連コラム 
VOL.108 [バカラ ロックグラスを選ぶ]
VOL.90 [ハズシとクズシの美学]

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添付写真:オトコなら誰もが福山雅治になりたいと一度は思うだろう。そんな“完璧性”を持ち合わせた人物ではありますが、彼の魅力は外見だけではなく、話すと面白い一面も大きな武器となっている。

【次回予告】 テーマ:「品」の源泉を探ってみた!(VOL.111)

Written by Yasumoto Takashi

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