VOL .34 [今、ラギッドファッションが熱い] 2010.10.08掲載

このところ、読者からのお便りや他の撮影現場などで雑誌「Free & Easy」を見ましたよ!という声をたくさん頂きます。オシャレなメンズファッショニスタの間では、ラギッドファッションに熱い視線が注がれているのを肌で感じます。そこで今回は、『ラギッドファッション』についてお話をしてみたいと思います。

ラギット[RUGGED]とは、直訳すると「表面がでこぼこした、ざらざらした」「素材が丈夫」「武骨な人柄」といった色々な意味が含まれており、ファッション用語ではあまり聞かない言葉です。意訳してもっとわかりやすく加工技術に置き換えると、ジーンズでいうダメージ加工・パッチワーク加工・ツギハギ加工・リペア加工といった製法になり、人が丹念に古着風に手を加えたものや人気デザインを復刻させたアメカジ風ファッションの総称を「ラギット」と呼んでいるのです(たぶん)。これは、古着ファッションとは一線を画くした、クラフト感溢れる味わいが、私を含め大人の遊びゴコロを擽(くすぐ)り人気を集めているのでしょう。

現在ブームのラギッドファッションのはじまりを辿ってみると、ラルフローレン氏が自身の集大成ブランドとして誕生(1993年)させた[ダブルアール エル:DOUBLE RL]が火付け役となってじわじわと広がり、今では国内外のジーンズブランドが挙(こぞ)ってラギットテイストを展開するようになったのです。

もともとジーンズなどのダメージやツギハギとは、自然なものであって、長く履き続ければ必然と生地はへたり破けるものなのです。それを捨てるのではなく、大切に補修した者の個性や愛着が服へと表現され、ユニークかつ斬新な発想での加工技術などがひとつのアート作品ともなり、ラギッドヴィンテージが誕生していったという経緯があるのです。特に、アメリカの世界恐慌(1929~)から第二次世界大戦終結(1945)あたりは、アメリカの不景気と政府の物質統制下には、たくさんのヴィンテージ作品が残されたという背景があります。ラルフローレン氏は、苦しくも成長し続けた「旧き良き時代のアメリカ」を復活させたのかもしれません。

また、忘れてはならないのは、ラギットの名付け親でもあり、ラギッドブームの立役者的存在として、どうしても外せないのが、雑誌「Free & Easy」ではないでしょうか。このご時世、メンズファッション誌の中で、発行部数を伸ばし続けているというのはお見事です。私自身も以前から一読者として本誌を見ながらも、いつかはここに登場してみたいと思っていたところだったので、実現することができてとても光栄です。

ラギッドファッションは、手の込んだ加工を施しているものが多い分、商品の値段自体が周りのものより割高になってしまう為、爆発的に売れたり、誰にでも手軽に買え浸透するものではありません。しかし、大手アパレルメーカーが本気で乗り出してきたら面白くなるかもしれませんね。また、男性にはクラフト感たっぷりなテイストは似合いますけど、女性にはカラフルカラーに変えてカワイらしく加工すれば人気が出るのかもしれません。

このラギッドブームが熱くなった背景には、様々な要因が想定できます。一つ目は、クラフトマンシップといった日本古来から受け継がれた「職人気質からの矜持(きょうじ)」とモノを大事に使うことで芽生える「愛着心」との融合。

二つ目は、少し穿った見方をすれば、オリジナルファッションの主張、既成のファッション雑誌の常套文句への嫌悪、ブランド側による流行モノの煽動行為にうんざりとした一部のファッションリーダーによって作られ、今の閉塞感漂うファッション業界に風穴を開けようとする試み。

三つ目は、ファッション業界を鳥瞰するように、価格の二極化するファッションブランドの最右翼勢が、最左翼勢の大量安売りへの挑戦状にも取れます。大量生産、ノーマルデザイン、低価格実現は、一体この先ファッション界に未来があるのかという投げかけ。

さて、このラギットブームは、一体どこまで旋風を巻き起こせられるのか、今後が楽しみでしょうがありません。


添付写真: 私のラギッドなアイテムの一部です。写真左上のアバクロシャツってラギッドなのかな~?

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Written by Yasumoto Takashi

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