VOL .64 [ユル武装という潮流] 2011.09.13掲載

rugged2今回ご紹介するのは、「ユル武装」という服装術です。この言葉、聞き慣れない方も多いのではないかと思いますが、語源は男性ファッション雑誌「Free & Easy」が提案する造語らしいのです。

【ユル武装:YURU-BUSO】とは、藍染めやインディゴ生地のアイテムを中心としたファッションスタイルの総称で、古布などをあしらった和風テイストの「ユルさ」とアメカジのパッチワークやツギハギを施した「ラギッドさ」をミックスしたものを言います。何とも言えない、何処にもない、誰とも被らないテイスト感が堪らないです。

今回、このテーマを取り上げる理由は、最近、撮影でこの洋服を着る機会が増え、着る度にこの服装術の良さを実感しているということが発端であります。それゆえに、自身本来の探究魂に火が点き、この服装術の何処に魅力があるのかを私なりに、少しでも皆様に伝えられたらと思った次第です。

さて、ユル武装の最大の魅力は、やはり日本古来から伝わる「藍染めの美学」にあります。日本人が一番似合うとされている藍色。俗に、ネイビーブルーとかインディゴブルーと言われている色です。藍染めが完成するまでは、何工程も擁して行う染色技術は、まさに職人技の賜物なのでしょう。

また、ユル武装には「ダメージの美学」というのもあります。ダメージ加工は、デニムではお馴染みです。ダメージ加工したものに下生地を付けたりしたものを、ジャケットやシャツに施すという手法は、斬新で気を衒(てら)っています。一見、ぼろ着にも見えなくもないのですが、今の飽食時代だからこそ、それがお洒落感覚と見られるのでしょう。パッチワーク加工には、機械では出来ない手作業が必要とされ、何とも味わいのある風合いが感じられます。

さてさて、巷のメンズファッション誌を開けば、どこもかしこもイタカジ・テイストであります。そして、イタリアのファッショニスタたちの着こなし特集といったリアルクローズ旋風。確かにお洒落ではありますが、その着こなし術をそのまんま日本人が模倣しても難しいものがあるのでは。まず、体型や骨格が日本人と違い、顔の造形や目の色、髪の色も違います。そこで盗むべきものは「カラーリング」といった色の組み合わせでしょうか。原色使いやグラデーション・コーディネイト、差し色テクニックなどなど、我々が見習うものは沢山ありそうです。その本質を忘れて、アイテムだけを買って真似をしても、後々の流用や汎用性に欠けてしまい、お蔵行きが関の山ではないでしょうか。あのピタッとした体のラインを出すイタリアファッションのモード感は、私自身とても好きなのですが(笑)。

「キレイ目」といった印象が強いアメカジ・ファッションのトラッドをベースに、ダメージ加工のラギット感やイタカジのタイトな男らしさをミックスさせるコーディネイトが、私には落ち着きます。

結局、今回取り上げた、ユル武装という和テイストは、ある意味どこの国のものでもない日本オリジナルの服装術なだけに魅力満載なのです。異素材である「藍染め」や「古布」をコーディネイトのポイントととしてあしらえて入れていくだけで、ユルさがいい味となり絶妙なオンリーワンの完成です。まずは、ストールやネクタイ、バンダナ等のアイテムを少しづつ味付けしてみるのもいいんじゃないでしょうか。

これからのコーディネート・トレンドのキーワードは、ズバリ「異素材の結合」だと思いますね。かなり上級向けではあるとは思いますが、チャレンジのし甲斐はありそうです。


添付写真:男性ファッション雑誌「Free & Easy」2011.10月号から

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Written by Yasumoto Takashi

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