2012年クールビズの開始は、節電対策の一環に伴い、夏場の電力不足を懸念して、すでに官公庁や一部の企業において、例年より一か月早い今月(5月)からはじまっています。
今回のコラムテーマは、8年目を迎える「クールビズ」にフォーカスを当てて、この政府主導のキャンペーンの行く末と私自身の願いを含めてお話したいと思います。
この時期のファッション雑誌には、あちらこちらでクールビズ特集が組まれ、「クールジェントルマン」「スマートビズ」等の言い換えタイトルで誌面を賑わせています。
全体に目を通した感想は、昨年までの踏襲パターンとは一線を画し、カジュアルダウン一辺倒からの揺り返し傾向が強いのではないかと思いました。というのも、昨年は「スーパークールビズ」と称し、アロハシャツやTシャツなども推奨し、“カジュアルダウンの極致”といった様相でありました。それが今年は、誌面を見る限りでは、あまりカジュアルダウンされたコーディネイトはされておらず、「品格」「気品」といったスタイルコンセプトで構成されているようです。
さて、その流れを推察するに、これまでのクールビズファッションがリラックスファッションに傾倒されたきらいがあったのかと思われます。もともとは、政府主導の地球温暖化防止対策を大義名分としてはじまったこのキャンペーン。リーマンショックから昨年の震災へと日本経済成長の下降は続き、現在でも浮上する好材料があまり見えないままでおります。そんな中でスーツを脱いで涼みましょう、ネクタイを外してカジュアルシャツに着替えましょうといっても、ますます激化するビジネス社会の空気がそおはさせてはくれない。ゆえに、ここにきてスーツたる意義をもう一度再考しようではないかという動きも一部にはありました。
また、政府発信のクールビズファッションを指南するアドバイザー的存在、所謂、巨匠デザイナー氏のファッションテイストやサジ加減といった傾向も大きくトレンドを左右しているのかとも推察されます。
私自身、過去にはクールビズ立ち上げでのファッションショー(2005年)、昨年のスーパークールビズファッションショー(2011年)共にショーモデルとして参加させていただきましたが、いつもこの時期に撮影で着用する「軽涼スーツ」なるものは、驚くほど軽く涼しげなスーツが発売されます。
日本の紳士服メーカー間には、熾烈な競争原理が働き、生地の技術革新や新素材開発は年々進化を遂げているかに見えます。日本の気候は、独特の高温多湿なため、麻素材や綿素材といったジャケットでは歯が立たない嫌らしい暑さがあります。そおいった難しい条件下での研究開発は、開発担当者をどこまでも貪欲に駆り立たせているやもしれません。
これからのクールビズのあり方は、カジュアル化をやみくもに推し進めるのではなく、ネクタイやジャケット、スーツの歴史的、社会的意義を踏まえた上で、中道からの選択をして欲しいものであります。それにはやはり、仕事服とは何たるやといった社会的言語(円滑な人間関係を構築させる社会性)の浸透も必要でありましょう。
2012年のクールビズは、進みゆくグローバル時代を見据え、「スーツとはいったいなんぞや!」ということを原点回帰させてくれる過渡期にきているのでしょうか。
このクールビズを機会に、クールでカッコいいスーツを着こなすジェントルマンが誕生してゆくことを心から楽しみにしています。
添付写真:昨年(2011年)の政府共催スーパークールビズSHOWでの記念写真。小池百合子国会議員の後にコヤジがひとり立っております。
関連コラムの検索に便利 「プライベートコラム 目次」
【次号予告】 テーマ:話し方も磨けば光る(VOL.77)